
A. 難しく考えなければ、基本的にはラクです
■ 「絵本の読み聞かせ」って、なんだかハードルが高い
「もう少し大きくなってからでいいかな」
「みんなが勧めるから、読み聞かせが気になってはいるけど…」
だって、毎日朝からバタバタして、ようやく子どもをお風呂に入れて布団に入ったとき。
「あ、読み聞かせ。やっぱりまた今度でいいか」と思ってしまう。そんなことありますよね。
「できれば、ラクにできる読み聞かせ、ありませんか?」と相談を受けることもあります。
また、図書館の読み聞かせ会や、上手な人の読み聞かせを見ると、
「自分はうまく読めるかな」
「子どもがちゃんと聞いてくれるかな」
と不安に感じてしまうこともあるようです。
「私には無理かも」と気後れしてしまうことも、珍しくありません。
でも、大丈夫。安心してください。
読み聞かせは、上手に読むことに価値があるわけではないのです。
絵本を通して、子どもと「時間を共有する行為」なのです。
完璧じゃなくても、つかの間でも、子どもにとって意味のある、豊かな時間が生まれます。
■ 大事なのは、「声を届けること」そのもの
子どもにとって、絵本の読み聞かせは、大好きな人の声で、心地よいことばを聞く時間です。
俳優さんや声優さんのように読まなくても大丈夫。
その子にとっていちばん親しんでいる声――つまり、あなたの声が最高の「語り手」なのです。
実際、子どもは「ことばの意味」だけでなく、声のトーン・リズム・間(ま)なども、まるごと受け取っています。
だから、完璧に読もうとしなくて大丈夫。
「自分の声で読んであげること」自体が、かけがえのない関わりになるのです。
読むだけで、すでに「とてもすてきな読み聞かせ」です。
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■ 読み方に「正解」はありません
「1ページずつ丁寧に読まないといけないの?」
「途中でしゃべったら、やめさせるべき?」
こうした質問もよくいただきますが、読み聞かせには「正しいやり方」やルールはありません。
絵本は、自由に読んでいいものです。
- 子どもが好きなページで止まって「ここ、好きなんだね」と声をかける
- 子どもが話し出したら、いったん聞いてあげる
- ページを飛ばしたり、何度も戻ったりしながら読む
こうした読み方も、子どもとのやりとりのある豊かな楽しみ方のひとつです。
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むしろ、「ちゃんと読まなきゃ」という気持ちが強すぎると、ハードルが上がりすぎて続けづらくなったり、親子のやりとりが一方通行になってしまったりすることもあります。
自由に読むこと、子どもとのやりとりが生まれること。
それこそが、読み聞かせの醍醐味です。
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■ 今日からできる、ラクに読むためのヒント
「でも、やっぱり気力が出ない…」
そんなときもありますよね。
そこで、読み聞かせを少しだけ気楽にするコツをご紹介します。
- タイトルだけでもと、気軽に考えて声を出してみる
→いちど声を出すと、続きも声が出やすくなって読みたくなります。 - 「うまく読む」より「向き合う」を大切に
→子どもの顔を見たり、反応に合わせて読むだけでも関係が深まります。 - 気分が乗らないときの1冊決めておく
→読み手のお気に入りを決めておくと、何度も読むうちにリズムがつかめます。
■ うまくいかなくても、それが「ふつう」です
読み聞かせをしても、
・聞いていない
・動き回る
・まったく反応がない
これらは、とてもよくあることです。みんな経験しています。
それで「失敗した」と思わなくて大丈夫。
絵本の時間は、「何かを教える時間」でも「じっとさせる時間」でもありません。
「子どもが安心して、その子らしくいられる時間」をつくっているのです。
■ 最後に:自分の声で読んであげることが、何よりの贈り物
誰にでもできるけれど、あなたにしかできないこと。
それが、あなたの声で、子どもに絵本を届けることです。
子どもは、声やまなざし、間(ま)、そして一緒に過ごす空気感の中で、ことばを吸収し、感情を育んでいきます。
読む気が起きないときは、この言葉を思い出してください。
「毎日じゃなくていい。好きなように読めばいい。読み聞かせは、どんな形でも、豊かになれる」
それは、どんなプロにもまねできない、あなたの声で育まれる時間なのです。

